まえがき
時代の移り変わりによって人々の考え方も生き方も変わってゆく。
二十世紀の激動の時代にそれぞれの分野で輝かしい名をなした人々、
戦にあたら命を散らした人たち、またその傷跡に喘いだ大勢の人、
その他幾億の人が歴史の流れを作ってきた。
その流れのなかの、ひとつの泡沫にすぎぬ市井の平凡な男の日誌に、
明治の気骨を見、大正のロマンを感じ、昭和の混迷を思う。
二十世紀の初めに生まれた一人の男の理想、
そしてひたすらに勉め励んだ現実。
世紀が変われば、理解できぬ考え方であり、生き方であろうが。